下切りレストラン2017

禁断ボーイズがやって来る!

禁断ボーイズ
  • 7月21日、28日、8月4日の3日間、禁断ボーイズがお化け屋敷に登場します。
  • 7月21日は全員 28日はメサイアといっくん 8月4日は田中くんとモーリー。
    ※都合により急遽変更する可能性もございます。あらかじめご了承ください。
  • この3日間はメンバーがお化け役やスタッフをします。
    出口でメンバーの誰かがお迎えします。
  • 7月21日には3日間分の来場チケットをその日限定で1000枚のみ3000円で販売します。
    このチケットを購入した人には出口でメンバーからサプライズで何かしてくれる!?
    会場に設置された券売機にてご購入下さい。券売機は開場1時間前から販売します。
  • 多くの方のご来場が予想されますので、入場受付を制限させていただく場合もございます。
    1時間以上の待ち時間が発生した時は整理券の配布をさせていただく場合もございます。
  • 営業時間:11時〜20時(上記イベント中のみ変更)
    ※通常営業時間:13時〜20時

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幸子の父は、“幸福な舌”を持つと言われた料理人でした。
誰もが料理にするのは無理だというような食材でも、彼の腕にかかれば素晴らしい料理に生まれ変わります。どんな人間でも料理で幸福に導くことから、彼は幸福の舌を持つと言われていました。
しかし、彼自身の人生は幸福なものとは言えませんでした。離婚や死別で再婚を重ね、最期は幸子以外に看取る者はいませんでした。
彼が亡くなるとき、枕元に幸子を呼ぶと、一本の銀のスプーンを出しました。
それを自分の舌に当てると、こう言いました。
「今まで多くの料理を作ってきたこのスプーンに、私の舌を移した。私の舌を受け取ってくれるか?」
幸子は、それを受け取るしかありませんでした。
一人の人間が死ぬということは、一つの味が消えるということです。けれど、その味が引き継がれる時、逆にその人間が生き続けるということでもあります。
幸子の父親は、幸子の料理を通じて生き延びたのかもしれません。

幸子は一日でも早く自分の店を持ちたいと思い、レストランを渡り歩きながら修行を積みました。けれど、店を持つためには、腕前だけではなく資金が必要です。
その資金を出してくれたのが、業田という男でした。彼のおかげで、幸子は念願の店を手に入れました。
幸子が父親から受け継いだ幸福な舌は、多くの客を唸らせ、レストランは一年も経たないうちに評判店となりました。
それと前後するように、業田が幸子に結婚を申し込みました。
それを聞いた幸子は、戸惑いました。というのも、業田には、毎週レストランに連れてくる恋人がいたからです。
その表情を見て、業田は言葉を継ぎました。
ずっと別れるつもりだった。けれど、別れ話を持ち出すたびに暴力を振るい、最近では刃物を持ち出してくるようになった。
そして、決意したかのように幸子の前にひとつの小瓶を置きました。
彼女がレストランに来るたびに、これを少しずつ料理に混ぜてくれないか。どんなものでも素晴らしい料理にできた君のお父さんだったら、これの味や匂いを消して、味わったことのないような料理が作れるはずだ。
幸子は凍り付きました。その様子を見た業田は、銀のスプーンを指して続けました。
幸福な舌は、自分自身も幸福にできるはずだ。
その言葉に、父親の不幸な家庭生活が思い出されました。
幸子は小さく頷くと、小瓶の中身を聞くこともなく、ポケットに入れました。

それ以来、業田は頻繁に恋人をレストランに連れてくるようになりました。幸子は、毎度趣向を変えた料理を作り、彼女を喜ばせました。
彼女は、食べ終わると決まったように言いました。
ここで料理を食べると幸福な気持ちになる。
それを聞くたびに、幸子は胸の奥に苦いものがこみ上げてくるのを感じます。けれど、幸福の舌が自分を幸福にしてくれるのだと言い聞かせ、その苦いものを飲み下します。
業田の恋人は、レストランに来るたびにやつれていきました。しかし、料理を食べるたびに幸せそうな顔になるのです。幸子の料理は、彼女の心を幸せにしながらその体を蝕んでいったのです。
一方、幸子にとって、人を死に追いやる料理を作ることは、父親の舌を裏切ることでした。幸子の舌の感覚も、同じように蝕まれていきました。
やがて、業田の恋人はレストランにさえ足を運べなくなってしまいました。彼女が亡くなったと知ったのは、それから一月後のことでした。
その頃には、幸子の舌はもう幸福な舌ではなくなっていました。彼女の舌から、父親から受け継いだ素晴らしい感受性は失われていました。
鋭い味覚を失った幸子は、やがて寝込むようになってしまいました。
しばらくして、心配した業田が訪ねてきました。
仲直りをしたいんだ。
そう言って、彼女のために料理を作り始めました。
テーブルに置かれたステーキは、食べやすいようにカットされ、おいしそうな匂いを立てていました。
その匂いに誘われて一切れ頬張ると、幸子の口の中に肉汁が拡がります。見事なレアな焼き加減です。空腹だった幸子は、夢中で口に運びました。
三切れほど食べたところで、不意に口の中に激痛が走りました。口を開けると、夥しい鮮血が溢れ出てきました。
苦痛のあまり助けを求める幸子に向かって、業田は冷たい口調で言いました。
「舌には二つの役割がある。ひとつは味を感じること」
そして、唇の端を歪めるとさらに冷たい口調で言いました。
「もうひとつは喋ることだ」
そう言うと、ステーキから何かをつまみ上げました。
それは、紙のように薄いカミソリの破片でした。
業田は、ステーキの中に、無数のカミソリの刃を埋め込んでいたのです。
「お前に喋られたら困るからな」
そういうと、業田は口から大量の血を流し続ける幸子を後に、家を出て行きました。

幸福な舌を失い、さらに喋ることもできなくなった幸子は、誰も来店しなくなったそのレストランの厨房で、孤独のうちに亡くなってしまいました。

今では廃墟となってしまったそのレストランからは、時々料理の匂いが漂ってくることがあると言うことです。
けれど、それに誘われてドアを開けてはいけません。
そこには、亡くなった幸子が、あなたに不幸に招く料理を作っているかもしれないからです。